私は月に1冊本を読んでいるのですが、もちろん心を動かされる本もあれば、記憶に残らない本もあります。
そして、「ああ読んでよかった」と思える本とはそんなに出会えないものです。人生を変える一冊なんて、そんなにあっても困ります。
しかし、また出会ってしまった。
『寂しい生活』です。
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この著者は、テレビも洗濯機も冷蔵庫も全て手放した「清貧生活」で数年前に話題になった方だそうです。
現代の便利すぎる生活を手放し、必要最小限で生きていく様子、そしてその生活から見られる心境の変化が面白おかしく書いてあり、夢中で読み耽りました。そして最初から最後まで期待を裏切らなかった。まさしく、私にとっての答えが載っていた。
私がこの本を手に取るきっかけになったのは、家の近くの古本屋でたまたま見かけたこと。最初は、なんだか偏った思想だな、と思っていたのですが、不安まみれの生活を送っていた私からしたら、電気を必要としない、最小限の生活を送っている著者の暮らしがすごく気になりました。
そこから読み始めましたが、親近感がわく語り口で書かれていて読みやすいのと、内容が非常に面白いことに惹かれ、1週間で読み切ってしまいました。
当たり前のように使っている家電を順番に手放す話なのですが、まず掃除機などの小型家電から始まり、テレビ、電子レンジ、洗濯機、最終的には冷蔵庫まで手放して、その代わりになるものを使って工夫していく姿、そしてその奮闘ぶりにワクワクさせられるのです。例えば、炊飯器の代わりにおひつを使ってみて、お米の状態の良さに感動する場面などは、私も使ってみたい!と思わせるのです。
また、家電を手放していく中で、本当に大事なことが浮き彫りになってくる点にも、読み手側の「当たり前」を考えさせられました。端的に言えば、ブッダの考えみたいな感じです。
この本を読んで、自分も使っている家電を見直そうと思い、リストに書き出しました。
思いつく限りで30箇所もあった。
こんなにも電気にお世話になっていたとは・・・!自分でも驚きです。
そして、少しでも電気を使うものをやめていこうと思いました。例えば、使っていない家電を手放すとか、似たような家電は1つにするとか。電灯なんて1種類でいいですよね。
また、家庭外でも、一人の時はエレベーターやエスカレーターに頼らず階段を登るようにしています。私の家は10階なので、これが非常に疲れますが、もしものときはエレベーターが使えないと思うと、日頃から鍛えておかねばなりません。
今の自分の暮らしは電気まみれで脆弱だと思います。ですので、著者ほどはいかなくても、少しずつ脱家電をして、「身もふたもない今を生きる」ことが人生なのかも、と本書を読んで妙に納得しました。無駄と思えることも一生懸命やる。そういう人間くさいことが、今の世の中からはすっぽり抜け落ちている気がします。
そして、本書でもちらっと触れていた、「家単位ではなく、街単位で生きる」考え方が、自分の価値観とは馴染みがなくて、なんか素敵だなと思った。
例えば、八百屋を冷蔵庫と捉える、銭湯をお風呂と捉える、という、所有するのではなくシェアするという考え方は、人と人とのつながりを重んじていてサステナブルです。助け合う社会には不可欠ですね。
まとまりなく感想を書いてしまいましたが、立ち止まって自分の生活を見直す、いいきっかけとなる1冊でした。閉塞した毎日を送っていると感じている方には読んでいただきたい1冊です。