毎日のふんばり日記

不器用な筆者ですが、考えて、書いて、を繰り返して、日々を記録しています。ブログタイトルを押すと最新記事に飛ぶので、記事一覧は★記事一覧はこちらからどうぞ。

猫の行動は予測できなくても何とも思わないのに、人間の行動は予測できないとイライラしてしまうわけー『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』を読んで

私たち人間は、猫の行動が思い通りにいかなくてもなんとも思わないのに、人間の行動が思い通りにいかないと不快な気分になる。

それについて、「おかしいな」「なんでかな」と最近考えていましたが、本を読んでいたら謎が解けました。

今日はほとんど私のための覚書になります。

 

結論から言いますと、不快な気分になるのは、人間に「心の理論」をもつ能力があるからです。

心の理論をもつ能力とは、

同種他個体に対して『自分と同じく意図や精神生活をもっているものとして理解する能力』(トマセロ:2006:6)

のことです。例えば、人間で言うと、自分以外の違う人間に対して自分と同じような精神性を持っていると考えることです。

ドイツの人類学者トマセロによると、他種と違い人類は「心の理論」をもつ能力があるおかげで、累進的な文化進化を遂げ、25万年という生物進化史的には短い時間で進化してきたのだといいます。

これはトマセロの「累進的な文化進化」仮説の一部分で、本題ではないのですが、この部分を読みハッとしました。

 

私たち、と言うより私が、他人の行動が自分の想像を超えてきたときに、不快な感情を感じるのは、相手のことを自己と同じような精神生活をもっていると理解する能力があるせいなのです。そして、それは人類の進化を支えてきた能力であるのです。なので、嘆くことはない。

猫に対しては何とも思わないことを、他の人間に対してはあれこれ思ってしまうのは当然のことだったというわけです。

 

そう考えると、他人を見放してしまう(他人にあれこれ思わないようにする)のは進化と逆を行っているのかもしれない・・・となりますが、これについては、またいつかお話するとして。

 

今回の内容は『ドーナツを穴だけ残して食べる方法』という書籍からお借りしました(引用箇所は同書から引用しています)。この本では、学者が、「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」を考察したり、ドーナツから派生した興味深い課題について書いている本です。

様々な学問分野からドーナツにアプローチされているため、入口(ドーナツ)に誘惑されて読み始めたものの、中身は結構骨太。読み切るのに1ヶ月くらい掛かりました。

経済学、物理学、化学・・・など、頭に浮かぶ主要な学問のドーナツ考察は一通り載っているのですが、自分の好みで、読みやすい/読みにくい学問が顕著なところも、この本の面白いところでした。

ちなみに私は法学部卒のため、法学パートは馴染みがありました(読みやすかった)。逆に、歴史や化学などは読むのに苦労しました。また、数学パートが意外にもハマったのも発見です。

新しい自分の興味分野を開拓するのにも、この本は向いているかもしれません。

何より、この本は大阪大学の学生が主体となって、発案から出版までを行ったというものですから、尊敬の一念です。